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109 『 天国からの友だち (a friend from heaven) 』 [小説『a friend from heaven』]

  修学旅行から戻ると、また受験という試練が待っていた。しかしそれは、僕にとって好都合だと思った。受験勉強に専念し、かおりのことを考えなくて済むと思ったからだ。かおりのことを忘れるためではない。かおりのことは、一生忘れやしない。忘れられるはずがない。考えないようにしようと思っただけだ。
  かおりのことを考えれば、かおりの笑顔を思い出してしまう。あの時脳裏に焼き付けたかおりの笑顔を。そうすると、虚しさ、悲しさに襲われ、押しつぶされてしまうかもしれないと思っていた。僕はまだ、それに耐えられる自信がなかったのだ。そんなことはかおりも望んではいないはずだ。だから、僕がそれに耐えられる覚悟ができるまで、考えないようにした。

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108 『 天国からの友だち (a friend from heaven) 』 [小説『a friend from heaven』]

  バスは高千穂を離れ、日南海岸へ向けて進んで行った。

  僕は今までの記憶を思い起こしていた。かおりと出会った時のこと。それは、僕には衝撃的なことだった。今思えばこれが、僕の人生における大きな転換時期のはじまりだった。彼女の存在が、僕を大きく変えていったのだ。彼女との会話、手紙のやりとり、こころの交わりによって、僕は人として成長していった。それまでの僕には欠けていた、人との交流、感情、生きる力を彼女が教えてくれた。さらに、人を愛すること、人に愛されることの意味、喜び、苦しみ、悲しみを教えてくれた。そして、愛する人を失うことの痛み、苦しみ、悲しみ、それを受け入れ乗り越えていくことの難しさ、大切さを教えてくれたのだ。

  バスは日南海岸を臨みながら進んでゆき、やがてホテルに到着した。美しい光景が広がる。二年半前と変わらぬ輝かしい光景。僕はまるで二年半前のあの日に戻ってしまったような錯覚に陥っていた。あの日感じていた甘い感情が蘇ってきた。いつまでも、それに浸っていたい。そう思い、願っていた。
  次の日、宮崎を離れる日になった。いつの日かまた、ここ日南海岸にも来よう。きっと、この美しく、光り輝く光景は変わることなく僕を迎えてくれるだろう。宮崎という地は僕にとって特別な場所となった。僕が将来くじけそうになった時、壊れそうになった時、この地に来よう。そうすれば、ひょっとしてかおりの声が聞こえるかもしれない。元気になれるかもしれない。その思いを胸に、宮崎を後にした。

タグ:小説
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107 『 天国からの友だち (a friend from heaven) 』 [小説『a friend from heaven』]

  まるで普通のデートの別れのようだ。かおりは、笑顔で手を振っている。かおりの最後の笑顔、僕はしっかりと記憶の中に植え込んだ。そして、集合場所の方へ歩いて行く。涙があふれ出て止まらなかった。僕は振り返らなかった。かおりの方を振り返りたくてたまらなかった。けれど、振り返らなかった。自分の涙をかおりに見られたくなかった。振り返れば、こころが揺らいでしまう。彼女を帰したくないと。彼女のこころも揺らいでしまうだろう。僕はただ涙があふれ出てくるばかりだった。もう何も考えていなかった。何も考えられなかった。

  集合場所に着き、バスに乗り込んだ。窓の外をぼーっと眺めた。外の景色のひとつひとつを慈しむように眺めていた。かおりとの思い出がたくさんあるこの場所を。何年か経ったら必ずここ、高千穂の地を訪れよう。そう決心した。
  ここを訪れてもかおりに会えないことは、もう理解し受け入れている。しかし、彼女との思いでは僕の記憶から消え去ることは絶対にない。それは、確信している。その時、僕のこころはどうなっているだろうか。かおりに恥ずかしくないように、それまで自分のこころをしっかり磨いておこうと思った。

タグ:小説
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