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008 『雨宿り』 [イメージ小説『雨宿り』]

修学旅行の行先は、日本海に浮かぶ小島だった。

宿泊ホテルでの部屋は、男子が四名ずつ、女子は二名ずつ。
そして、自由行動のグループは、男子は部屋割り通りの四名で、女子は二部屋の四名と割り振られた。
教師に押し切られた形通りの、教室での座席順だ。

目的地までの旅程、そして一通りの観光は集団行動だ。
雨田は、今までの修学旅行、遠足などの課外授業の時と同じく、集団に付いていっていた。
時にはしゃぎながら、ふざけておどけたりしながら歩いて行くクラスメート達の後ろから付いていくのだった。
クラスメート達は、後ろの雨田を気にする様子もなく、誰もいないかのように楽しげに歩いていた。

グループでの自由行動の日。
雨田のグループ四人は、磯釣りを選択していた。

「雨田、おまえ、釣りできんのか?」
誰が決めたわけでもないがそのグループのリーダー的な役割のような作下が問いかけた。
「いや・・」
雨田はうつむいて答えた。
「じゃあどうして・・」
他の一人が言いかけたのを作下が遮るように、
「まあ、いいや」
と言い、海岸の方へ向っていった。
三人は釣りの話で賑やいでいた。
その後ろを雨田が付いていくのだった。
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007 『雨宿り』 [イメージ小説『雨宿り』]

チャイムが鳴った。

ガヤガヤと教室の外から声が近付いてきた。

賑やかな声と共に、教室の戸が勢いよく開いた。

「おっ」
そんな声も上がった。
わずかな沈黙の後、
「なんだ?あの島」
雨田達が座っている三つの席の方を見て、誰かれとなくつぶやいた。
ミオが、影木をかばうように、その視線を遮るようににらみ返していた。

「離島だな」
また誰かがつぶやく。
「いや、孤島だ」
笑い声のようなつぶやきになった。

雨田はすっと立ち上がると、生徒達の中をすり抜けるように逆行して、教室を出て行った。
教室に戻ってきている生徒達の視線が、彼の背中に当たっていた。

「チッ」
と誰かが舌打ちをしたのを、雨田は振り向くことは無かった。
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006 『雨宿り』 [イメージ小説『雨宿り』]

驚いて、自分の机に伏している影木に目を移した雨田は、しばらく彼女を見詰めていた。

どうしていいのか戸惑っている様子でもなく、じっと視線を送っていた。

ミオも驚いた様子で、影木と、そして雨田に視線を送ってる。

雨田は、ミオの何かを訴えるような視線に気にする様子もなく、じっと見詰めているのだった。

長くも感じられた無言の空気の中、影木が顔を上げた。
影木の目には、こぼれ落ちそうに涙があふれていた。
その涙を確かめるように見詰める雨田は、

「泣いていいんじゃない」
小さな声でつぶやいた。
雨田に視線を合わした影木は、小さくうなずいたように見えた。
そして、体を前に戻し顔を手で覆った。
小さく震えている影木の背中を見た雨田は、またうつむいて教科書に目を落とした。

めったに聞いたことがない雨田の声を聞いて少し驚いた様子のミオは、すぐに影木の顔を覗きこんだ。
彼女の背中をさすりながらミオは、
「ヒロ、大丈夫?」
と、覆った手からこぼれる彼女の涙滴を見詰めながら、声をかけていた。
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